IoT とは? – クラウド時代に広がる「モノのインターネット」
IoT とは、センサーやカメラ等の「モノ」をインターネット経由でクラウドやサーバーにつなぎ、デジタルデータを利用したり、機器を制御する仕組みのことです。
工場や農業、医療、物流、そして一般家庭まで、あらゆる産業や分野で IoT 技術が導入されており、令和6年版情報通信白書によると、2027 年には 572.6 億台になるという予測もあります。
現場の可視化・スマート化によるコスト最適化や、新しい価値創造の基盤として、これからのデジタル化社会に不可欠な存在です。
IoT を支える要素―「モノ」と「クラウド」
モノ(IoT/M2M デバイス)
近年はスマートフォンやスマートウォッチに加え、センサーを搭載した小型コンピューター(例: Raspberry Pi)など、多様なデバイスが身近になりました。こうした「モノ」はインターネットにつながることで、自動的にデータを収集してクラウドに送信したり、また機器の制御を受け付ける役割を持ちます。
クラウドコンピューティング
クラウドの進化は、IoT 実現の大きな後押しとなりました。たとえばデータを保管するクラウドストレージ(Amazon Simple Storage Service (S3) や Azure Blob
Storage など)は、数GBからでも低コストで利用でき、必要に応じて大規模に拡張できます。クラウド上に保存したデータは、仮想サーバーや機械学習・生成 AI を使ってリアルタイムに分析・可視化することが可能です。
クラウドによる安価かつ拡張性が高く、また最新技術がすぐに利用できる環境は、かつて大企業が大きな初期投資をしなければ手に入れられなかったものですが、現在は誰でも使えるようになり、IoT 導入のハードルが大きく下がりました。
IoT が社会に及ぼす影響
センサー×通信×クラウドという組み合わせ自体は以前から存在していましたが、通信費やハードウェアの低コスト化、クラウドサービスの普及、および
*機械学習や人工知能(AI)技術[2] の汎用化が進み、かつては大企業や特定分野に限られていた IoT が、あらゆる分野で利用できるようになりました。
さらに、製造業やサービス業では、製品を売り切りではなく“サービスとして提供”するビジネスモデルへ移行する動きが加速。センサーで収集したデータを活用し、新機能を定期的に追加するなど、利用価値を継続的に高めるアプローチが世界的な競争のカギになっています。
IoT がもたらすメリット
IoT を導入することで実現できる例は多岐にわたります。
暮らしへの応用
家庭内の電化製品やセキュリティ機器をクラウドにつなぎ、遠隔から操作・監視。天候や健康状態に応じて自動的にエアコンや換気設備を制御するなど、安全・快適な住環境づくりに役立ちます。
クルマ・交通分野
車内センサーから集めたデータを解析し、乗車状況や渋滞情報に合わせて最適な運転をアドバイス。また、そのビッグデータをもとに新しい保険サービスや自動運転技術が発展しています。
健康・医療分野
ウェアラブル端末を使って日常の健康データをモニタリングし、専門家がアドバイスや遠隔診療に活用。異常値を検知して早期発見・早期予防につなげるシステムも研究・実用化が進行中。
産業・製造分野
工場の機器にセンサーを取り付けて故障を予測し、ダウンタイムを未然に防ぐ「予知保全」。また、在庫や稼働状況をリアルタイムに可視化することで、製造ライン全体の効率を向上させる事例も多数。
このように IoT によって新たなサービスや製品が生まれ、企業や社会に 新しい収益機会 がもたらされています。
IoT 実用化に向けた主な課題
- セキュリティ
デバイスがネットワークに常時接続されることで、盗聴や不正アクセスといった一般的な IT システムと同様のリスクにさらされます。数万台以上のデバイスを安全に管理するためには、暗号化や認証の仕組みを含めたセキュアな通信設計が必要です。 - インターネット接続の確保
通信環境が整った場所だけでなく、屋外や移動体でも使えるネットワーク手段が求められます。Wi-Fi などの無線 LAN 設定には手間やセキュリティ懸念があり、現場ごとに専門家が設置しなければならない場合もあります。 - 電力供給
省電力設計が必要なケースでは、バッテリー交換や充電の手間を最小化しなければなりません。設置場所によっては電源を確保できないこともあり、ソーラーパネルや低消費電力プロトコルなどの工夫が求められます。 - 端末管理
多数のデバイスが稼働する中で、ソフトウェアの更新や接続先の変更を一括管理できる仕組みが重要です。一台ずつ現地に行って設定変更を行うのは非現実的なため、リモート一括操作ができるプラットフォームが求められています。
IoT とセキュリティ
「モノ」がインターネットにつながる以上、認証情報の漏えい、リモートからの不正操作、マルウェア感染などのリスクへの対処が必須です。IoT デバイスは CPU
やメモリのリソースが限られており、強固な暗号化を実装しにくい といった制約もあります。
SORACOM
が提供するプラットフォームでは、通信の暗号化処理をクラウド側で肩代わり(オフロード)する機能や、インターネットを経由せずにクラウドにデータを送る「閉域網接続」などを安価に利用できます。また、ブラウザ上の管理画面やプログラムから API
経由で大量のデバイス設定を一括変更できるのも特長です。
こうした仕組みを活用すれば、セキュリティ対策をデバイスごとに独自実装する負担を減らし、多数のデバイスを安全・簡単に運用できます。
IoT 通信の課題
IoT においては、モノをどうインターネットにつなぐかが大きなテーマです。
- 有線 LAN は設置できる場所が限られ、機器の移動も困難
- Wi-Fi は設定作業や暗号化の手間がかかる上、電波到達範囲にも制限あり
- モバイル通信は場所を選ばずにつながりますが、もともと「人向け」に提供されてきた料金プランが多く、IoT デバイス数が増えるほどコストが膨らむという課題がありました。
SORACOM が IoT で選ばれる理由
インターネットを経由しない「閉域網接続」
SORACOM では、携帯キャリアの基地局と AWS (Amazon Web Services) を専用線で直結し、データを インターネットを経由せず にクラウドへ送信できます。
これにより、外部からの不正アクセスリスクを低減し、セキュアな通信環境を実現します。
IoT に最適化した通信料金
一般的なモバイル通信サービスは「人向け」に設計されているため、大量のデバイスがわずかなデータを送受信する IoT 用途ではコストが膨らむ場合があります。
一方、SORACOM は IoT 向けの料金プラン を採用し、多くのデバイスを低コストで運用できます。
クラウド上での一元管理
SORACOM の管理画面(ユーザーコンソール)や API を使えば、モバイル回線の制御やリモートアクセス、データ転送設定、ユーザー管理、利用料金の管理などを WEB ブラウザやプログラムから簡単に行えます。
デバイス設定の一部を SORACOM の仕組みに乗せることで、IoT デバイスの設定変更のために現場に赴く回数を削減し、効率的な運用をサポートします。
スモールスタートから大規模展開へ
SORACOM が提供する仕組みにより、最初は数台で動作検証(PoC)を行い、その後数万台以上へ拡張するといった柔軟なスケールアップが可能です。
通信コストを抑えつつ、サービス立ち上げに要する時間も短縮できるため、IoT 導入のリスク低減が期待できます。
まとめ
IoT は、センサーやデバイスがクラウドにつながることで、従来の産業構造や生活様式を大きく変えつつあります。データを収集・分析し、リアルタイムに制御・サービス提供できる仕組みが、あらゆる分野で新たな価値創造 をもたらしています。
ただし、セキュリティや大量のデバイス管理など、運用面の課題も少なくありません。そこで SORACOM のような IoT プラットフォームを活用することで、通信回線や管理機能をオールインワンで利用でき、少ない初期投資で IoT を始められます。